昨今のデジタル化の波に乗り、多くの中小企業がビジネスプロセスの効率化を進めています。その中でも特に注目を集めているのが、顧客対応業務を自動化できるチャットボットです。
従来は大企業向けと考えられていたチャットボットですが、技術の発展により中小企業でも手の届く価格帯で導入できるようになりました。
本記事では、中小企業が抱える顧客対応の課題から、チャットボット導入のメリット、おすすめのツールまでをご紹介します。

中小企業が抱えるお客様対応への課題
多くの中小企業では、限られた人員とリソースの中で効率的な顧客対応の実現に苦心しています。特に近年は、オンラインでの問い合わせチャネルが増加し、24時間365日の対応が求められるようになってきました。
ここでは、中小企業が直面する主な課題についてご紹介します。
問い合わせ対応のスタッフが必要
中小企業では、経営資源が限られているにもかかわらず、顧客からの問い合わせに対応するために、複数のスタッフを配置しなければならない状況が多く見られます。
特に専門知識が必要な業界では、社内の限られた専門家に問い合わせが集中してしまい、本来の業務に支障をきたすケースも少なくありません。
また、コア業務と並行して問い合わせ対応を行わなければならない状況も多く、業務効率の低下を招いています。
スタッフごとにスキルの差がある
顧客対応には、コミュニケーションスキルはもちろんのこと、商品やサービスに関する深い理解が求められます。
しかし、中小企業では教育研修の機会が限られているケースも多く、スタッフ間でスキルや知識に大きな差が生じがちです。
特に新入社員が電話対応を行う場合、適切な回答ができずに顧客の不満を招いてしまうことも珍しくありません。
また、ベテランスタッフの知識やノウハウを効率的に共有できる仕組みが整っていないことも、大きな課題となっています。
対応に時間がかかり、お客様満足度が低下する
問い合わせ対応のプロセスが明確に整備されていない中小企業では、顧客からの要望に迅速に対応できないケースが多く見られます。
特に複雑な問い合わせの場合、他のスタッフや部署への確認が必要となり、回答までに時間がかかってしまいます。
その結果、顧客満足度の低下を招き、最悪の場合は顧客離れにつながるケースも考えられます。また、夜間や休日の問い合わせへの対応が遅れることで、ビジネスチャンスを逃してしまうリスクもあります。
中小企業がチャットボットを導入するメリット
このような課題を解決する手段として、チャットボットの導入が注目されています。
ここでは、中小企業がチャットボットを導入することで得られる主なメリットについてご紹介します。
問い合わせ業務を効率化できる
チャットボットを導入することで、よくある質問や定型的な案内を自動化し、スタッフの業務負担の大幅な軽減につながります。特に、基本的な情報提供や簡単な問い合わせについては、チャットボットが24時間体制で対応することが可能です。
これにより、スタッフはより複雑で専門的な問い合わせや、コア業務に注力できるようになるでしょう。また、チャットボットが一次対応を行えば、スタッフの対応が必要な案件を効率的に振り分けられます。
お客様満足度の向上が期待できる
チャットボットは24時間365日稼働するため、顧客は時間を問わず必要な情報を得られます。特に基本的な情報提供や簡単な問い合わせについては、待ち時間なく即座に回答を得られるため、顧客満足度の向上につながるでしょう。
ただし、複雑な問い合わせや感情的なケースについては、人による対応が必要となるため、チャットボットと人による対応との適切な組み合わせが重要です。
収集したデータをもとにサービスを改善できる
チャットボットは、顧客とのやり取りを自動的に記録・分析する機能を備えています。これにより、よくある問い合わせの内容や、顧客が抱える課題を定量的に把握できます。
また、チャットボットが対応できなかった質問や、顧客の不満が多い項目なども明確になるため、サービスの改善点を特定しやすくなるでしょう。
このデータを活用すれば、FAQ(よくある質問)の充実や、商品・サービスの改善につなげられます。
中小企業におけるチャットボットの選び方
チャットボットを導入する際は、自社の課題や目的に合わせて適切なツールの選択が重要です。ここでは、中小企業がチャットボットを選ぶ際のポイントについてご紹介します。
AI型かシナリオ型か
チャットボットには大きく分けて
・AI型
・シナリオ型
の2種類に分けられます。
【AI型】
機械学習を活用して柔軟な対応が可能ですが、導入・運用コストが高くなる傾向があります。
【シナリオ型】
あらかじめ設定した質問と回答のパターンに基づいて対応するタイプで、導入コストが比較的低く、確実な回答が期待できます。
中小企業の場合、まずはシナリオ型から始めて、段階的にAI型への移行を検討するのが一般的です。
社内向けか、社外向けか
チャットボットの用途としては、社内向けのヘルプデスクと、社外向けのカスタマーサービスの2つが主流です。
中小企業の場合、まずは顧客からの問い合わせ対応の効率化を目的とすることが多いため、カスタマーサービス向けのチャットボットを選択するケースが多くなっています。
ただし、将来的な拡張性を考慮し、社内利用にも対応できるツールを選ぶのがおすすめです。
サポート体制は整っているか
チャットボットの運用にあたっては、設定やメンテナンス、トラブル対応など、技術的なサポートが必要です。
特に中小企業では社内にIT専門家が少ないケースが多いため、ベンダーのサポート体制の充実が重要です。
導入時のコンサルティングや、運用開始後の技術サポート、トラブル時の対応体制などを確認しましょう。
ダットジャパンでは25年以上の運用実績と、完全に自社のツールを扱った導入支援・堅実サポート体制を構築しております。
導入時には詳細なヒアリングから、自社にとって本当に必要なシステムをオーダーメイドで構築するため、お客様の課題に対してクリティカルな解決策をご提供できます。

必要な機能は搭載されているか
チャットボットによって搭載されている機能は異なります。自社の課題や導入目的を明確にしうえで、必要な機能が搭載されているかの確認が重要です。
たとえば、多言語対応、データ分析機能、他システムとの連携機能などが必要かどうかを検討しましょう。また、将来的な拡張性も考慮に入れる必要があります。
運用コストは適切か
チャットボットの導入・運用には、初期費用の他に月額利用料やカスタマイズ費用、サポート費用などが発生します。
これらのコストが自社の予算に見合っているかを慎重に検討しましょう。特に中小企業の場合、費用対効果を重視し、必要最小限の機能から始めることをおすすめします。
中小企業におすすめのチャットボット10選
それでは、中小企業におすすめのチャットボットを10個ご紹介します。
各ツールの特徴や費用感を詳しく解説していきます。
ダットジャパン

ダットジャパンは、主にコールセンター向けのチャットボットを提供しています。
FAQサイトやデータベース上の情報をもとに回答でき、コールセンターやチャット業務の効率化を図れるでしょう。自然言語処理技術により、顧客の意図を正確に理解し、適切な回答を提供できます。
さらに、コールセンター用 管理システム(CRM)やIVR(自動音声応答)/ビジュアルIVRシステムなどのシステムも提供可能です。
コールセンターに関するさまざまなシステムの独自カスタマイズもでき、自社に合わせたシステムの導入ができます。
お客様の業務課題をクリティカルに解決するため、導入前には詳細なヒアリングを行い、オーダーメイドでツールを導入いたします。そのため費用については状況により変動するためまずはお問い合わせくださいませ。
初期費用 |
要問い合わせ |
月額費用 |
要問い合わせ |
URL |
https://datt-contactcenter.jp/ |
ChatPlus
ChatPlusは、AIを活用した高度な自動応答機能を特徴とするチャットボットです。
初期費用は0円から、月額利用料は1,500円からとなっています。特徴的なのは、顧客の入力内容を解析し、最適な回答を自動で選択する機能です。
また、運用開始後も継続的に学習を重ね、より精度の高い応答が可能となります。
サポートも充実しており、「対面訪問」「Web会議」「セミナー」「チャット」「電話」「メール」の6つの方法で問い合わせできます。
初期費用 |
0円 |
月額費用 |
1,500円~(税抜) |
URL |
https://chatplus.jp/ |
AI Messenger Chatbot
AI Messenger Chatbotは、カスタマーサポート向けのAIチャットボットを提供しています。初期費用は50万円から、月額利用料は15万円からとなっています。
独自テクノロジーである『AI Compass』を活用したチャットボット運用が可能です。
チューニング効果の高い箇所をAIが提示するため、回答精度の向上に役立ちます。さらに各種システムとの連携も可能です。
初期費用 |
50万円~ |
月額費用 |
15万円~ |
URL |
https://www.ai-messenger.jp/ |
GENIEE CHAT
GENIEE CHATは、リマーケティングとカスタマーサポート強化につながるチャット型Web接客プラットフォームです。
顧客の疑問を即座に解決することで、購入意欲を促進できるでしょう。
よくある質問は「FAQボット」で即解決し、お悩みや相談には「有人チャット」で解決するなどの使い分けも可能です。
初期費用 |
要問い合わせ |
月額費用 |
成果報酬型(月間CV数により単価が変動) |
URL |
https://chamo-chat.com/ |
sinclo
sincloは、わかりやすさを重視したチャットボット型のWeb接客ツールです。
リード獲得や接客の課題、人材派遣・人材紹介業の課題などで悩む企業におすすめです。
ユーザーの行動履歴や属性に基づいた細かなターゲティング設定が可能なため、効果的なコンバージョン率の向上が期待できるでしょう。
さらに、よくある質問や資料請求などをチャットボットに任せられます。
チャットボットとオペレーター対応どちらも利用できるハイブリッドタイプであり、自社のニーズに合わせて選べるのも特徴です。
初期費用 |
0円 |
月額費用 |
10,000円~(コスト重視プラン) |
URL |
https://chat.sinclo.jp/ |
SYNALIO
SYNALIOは、チャットボット型のマーケティングツールです。
特徴的なのは、顧客の質問意図を高精度に理解し、適切な回答を提供する機能です。
また、応答内容の自動学習機能により、運用開始後も継続的に精度が向上していきます。
また、チャットボットの作成が感覚的に行えるのも特徴です。ドラッグ&ドロップで誰でも簡単に会話シナリオを作成可能です。
さらに、分析結果も直感的に理解できるわかりやすいログダッシュボートを採用しています。
配信条件設定を簡単に行えるため、使いやすいでしょう。
初期費用 |
100万円〜(税抜)/1ドメイン |
月額費用 |
150,000円(マーケティングプラン)(税抜)/月/1ドメイン/従量課金年間契約 |
URL |
https://chat.sinclo.jp/ |
TalkQA
TalkQAは、AI型とシナリオ型の特徴と持ったハイブリッドチャットボットです。
社内・社外の問い合わせ内容、店頭案内、コールセンターの支援など、さまざまな場面で活躍してくれるでしょう。
まるで会話をしているように自然なコミュニケーションが可能です。
また、自由記入での、処理が難しい場合は選択肢の中から問い返すこともできます。
初期費用 |
715,000円(税込) |
月額費用 |
33,000円~(エクスウェアAIプラン) |
URL |
https://www.talkqa.com/ |
KARAKURI chatbot
KARAKURI chatbotは、生成AIと定型AIを組み合わせたハイブリッド型チャットボットです。
顧客の質問を深く理解し、最適な回答を提供する機能があり、顧客の満足度向上に貢献します。
高精度なAIチャットボットで業務効率化につなげられるでしょう。
FAQとの一元管理も可能です。簡単な設定を行うだけで、FAQサイトを構築できます。
また、チャットボット構築時に登録したQ&Aデータを使えば、最短1時間程度でリリースが可能なのも特徴です。
さらに、チャットボットの会話履歴をもとに、有人チャットへの連携もできます。
初期費用 |
要問い合わせ |
月額費用 |
要問い合わせ |
URL |
https://karakuri.ai/ |
Helpfeel
Helpfeelは、検索型FAQシステムです。
社内のナレッジを効率的に管理・活用できる機能が特徴で、顧客対応の品質向上と業務効率化を同時に実現できます。
カスタマーサポート、EC運用・マーケティング、DX推進・経営企画、情報システム(社内ヘルプデスク)など、さまざまな場面で活躍してくれるでしょう。
導入から改善まで、AIとプロのサポートを受けられるので、初めて導入する企業も安心です。
初期費用 |
要問い合わせ |
月額費用 |
要問い合わせ |
URL |
https://www.helpfeel.com/ |
チャネルトーク
チャネルトークは、AIチャットボット搭載のCSツールです。
AIエージェント会話の流れを理解し、適切な回答を行います。
基本的な自動応答機能に加え、オペレーターによる有人対応への切り替えもスムーズに行えるため、段階的な自動化を目指す企業におすすめです。
初期費用 |
無料 |
月額費用 |
3,600円~(Early Stage) |
URL |
https://channel.io/ja |
中小企業がチャットボットを導入する際の注意点
チャットボットの導入だけでは、期待する効果は得にくいでしょう。導入後の運用体制の整備や、継続的な改善活動が重要となります。
ここでは、中小企業がチャットボットを導入する際の主な注意点について解説します。
導入後の運用体制を整備しなければいけない
チャットボットの導入は、システムの実装で終わりではありません。効果的な運用を実現するには、継続的な改善活動が不可欠です。
特に重要なのは、チャットボットの応答内容を定期的に見直し、より適切な回答ができるように改善していくことです。たとえば、新商品の追加や、サービス内容の変更があった場合は、速やかにチャットボットの設定を更新する必要があります。
また、チャットボットが適切に対応できなかったケースについては、その原因を分析し、応答パターンの追加や修正を行う必要があります。このような改善活動を怠ると、かえって顧客満足度の低下を招くリスクがあります。
運用開始前に、誰がどのようなタイミングで改善活動を行うのか、明確な役割分担とプロセスを定めておくことが重要です。
費用対効果を実感できるまで時間がかかることもある
チャットボットの導入により業務効率化が期待できますが、その効果を実感できるまでには一定の時間が必要です。
特に導入初期は、チャットボットの学習期間として考える必要があり、即座に大きな効果を期待することは現実的ではありません。
また、効果を適切に測定するためには、具体的な目標値の設定と評価計画の策定が不可欠です。たとえば、問い合わせ対応時間の短縮率や、チャットボットの回答率、顧客満足度の変化など、定量的な指標を設定し、定期的に測定する仕組みを整える必要があります。
このような効果測定の仕組みがないと、費用対効果を適切に把握できず、投資判断を誤る可能性があります。
中小企業がチャットボットを運用する際のポイント
チャットボットの効果を最大限に引き出すためには、適切な運用体制の構築が不可欠です。ここでは、中小企業がチャットボットを運用する際の重要なポイントについてご紹介します。
運用体制を整備する
効果的なチャットボット運用を実現するには、専任の管理チームやスタッフの配置が望ましいです。管理担当者は、チャットボットの動作状況を監視し、必要に応じて設定の調整や改善を行います。
また、顧客からのフィードバックやチャットログを分析し、応答品質の向上に努めることも重要な役割となります。特に重要なのは、チャットボットが対応できなかった質問や、不適切な回答をしてしまったケースを把握し、改善につなげることです。
このような分析結果をもとに、シナリオの追加や修正を行えば、徐々にチャットボットの応答品質を向上させられるでしょう。
数値を管理する
チャットボットの効果を適切に把握するには、具体的な指標を設定し、定期的な測定・分析が重要です。
主な指標としては、応対時間、解決率、顧客満足度などが挙げられます。これらの指標を定量的に測定し、導入前後での変化を把握すれば、費用対効果を明確できます。
また、チャットボットの利用状況や対応内容を分析すれば、顧客ニーズの把握や商品・サービスの改善にも活用できます。たとえば、よく寄せられる質問の傾向分析や、対応が困難だった案件の分析などを通じて、新たな課題や改善点を発見できます。
定期的に改善する
チャットボットの効果を持続的に向上させるには、定期的な改善活動が不可欠です。特に重要なのは、チャットボットの設置場所や使いやすさの改善です。
たとえば、Webサイト上での配置位置を最適化したり、対話インターフェースをより使いやすく改善したりすることで、利用率の向上を図れるでしょう。また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、応答内容や対話フローの改善に活かすことも重要です。
定期的なアンケート調査や、チャットログの分析を通じて、顧客の要望や不満点を把握し、継続的な改善につなげていくことが望ましいでしょう。
まとめ
中小企業にとって、チャットボットの導入は業務効率化と顧客満足度向上を実現する有効な手段となります。
しかし、効果を最大限に引き出すためには、適切なツールの選択と運用体制の整備が不可欠です。特に重要なのは、導入後の継続的な改善活動です。
チャットボットの選定にあたっては、自社の課題や目的を明確にしたうえで、機能面だけでなく、サポート体制や費用面も含めた総合的な判断が重要です。
また、運用開始後は、定期的な効果測定と改善活動を行い、持続的な効果の向上を図ることが望ましいでしょう。