自社でコールセンターを運営するべきか、それとも委託(アウトソーシング)すべきか。多くの企業が直面するこの判断には、費用と効果のバランスを見極めることが重要です。コールセンター委託では、業務内容や運用体制によって料金体系や相場が大きく異なるため、事前に正確な情報を把握することが求められます。本記事では、委託費用の構造や相場感、料金体系の比較、コストを抑える方法などを徹底解説します。自社に最適な委託先を選ぶための判断軸として、ぜひご活用ください。

コールセンター委託費用の基礎知識
コールセンター業務を外注する際、まず把握しておくべきなのが費用構造の基本です。委託費用は単純な人件費だけではなく、システム利用料や管理費、教育コストなど、さまざまな要素から構成されています。適切な見積もりや契約を行うためには、どのような業務にどの程度のコストが発生するかを明確にしておく必要があります。
委託費用が発生する主な業務内容
コールセンター業務と一口に言っても、業務の範囲は多岐にわたります。費用が発生する主な業務には以下のようなものがあります。
- インバウンド業務:顧客からの問い合わせ対応、注文受付、商品説明など
- アウトバウンド業務:営業電話、アンケート、フォローコールなど
- 事務処理系業務:予約管理、キャンセル処理、メール返信など
- 顧客情報管理:CRMの更新、顧客履歴の記録
- 研修・教育:オペレーターへの業務指導やマニュアル作成
- 品質管理:対応品質のチェック、フィードバック体制の整備
これらの業務が単独あるいは組み合わせで委託されることで、費用体系にも複雑性が生まれます。
内製と外注で異なるコスト構造
自社運営と外部委託では、費用のかかり方が大きく異なります。内製では採用・教育・人件費・設備投資が主なコストになりますが、外注ではこれらが包括的なサービス料として一本化される傾向にあります。
項目 |
自社運営 |
外注(委託) |
採用コスト |
自社負担(求人広告・面接等) |
委託先が負担 |
教育・研修 |
内部で実施 |
委託料金に含まれることが多い |
人件費 |
固定費(給与・社会保険等) |
月額固定や従量課金として変動 |
システム導入 |
自社で準備・管理が必要 |
委託先のシステムを利用可能 |
管理コスト |
シフト管理・品質管理など社内工数 |
委託先にアウトソースできる |
このように、外注では変動費化が進み、予算の柔軟性が高まる傾向があります。ただし、料金体系や契約内容によっては想定外のコストが発生する場合もあるため、委託範囲を明確にすることが重要です。
委託の料金体系|3つの主流パターンを比較
コールセンター業務の委託費用は、契約方式によって大きく異なります。料金体系を理解しておくことで、自社の業務ボリュームや目的に合ったコスト管理が可能になります。ここでは、代表的な3つの料金体系をご紹介します。
月額固定制の特徴と向いている企業
月額固定制は、1か月あたりの費用が定額で設定されている料金体系です。業務件数に関係なく、一定の金額で対応するのが特徴です。
主な内容
- 一定の時間帯に常時オペレーターが対応
- 応答数が多い月でも追加費用が発生しにくい
- 見積もりがしやすく、予算管理がしやすい
費用目安
- 5席規模:月額30万〜80万円前後
- 業務内容によって上限あり
向いているケース
- 毎月の問い合わせ件数にばらつきがある
- 応答漏れを避ける体制を重視したい
- サービスの安定運用が求められる業種(EC、通信、保険など
定額制であっても、対応件数が極端に多い場合は追加料金が発生する可能性があるため、契約条件の確認は必須です。
従量課金制(件数・通話数ベース)のポイント
従量課金制では、対応件数や通話時間に応じて費用が発生します。使った分だけ支払う仕組みで、無駄が出にくいのが特徴です。
主な内容
- 1コールごと、または1分単位での課金
- 月間件数が少ない場合はコストが抑えられる
- コール数が少ない企業にとっては効率的
費用目安
- 1件あたり:200円〜400円程度(インバウンド)
- 1件あたり:400円〜1,000円程度(アウトバウンド)
【向いているケース】
- コール件数が月によって大きく異なる
- まずは試験導入したい
- キャンペーンなど期間限定の対応
この方式では件数の増加によってコストが急激に上がることもあるため、予測精度や上限設定の確認が大切です。
ハイブリッド型・成果報酬型など柔軟なプラン
最近では、固定費と従量課金を組み合わせたハイブリッド型や、成果に応じて報酬が発生する成果報酬型の導入も増えています。
ハイブリッド型の特徴
- 一定の基本料金+件数や時間に応じた変動料金
- 安定性と柔軟性のバランスをとれる
- 予算枠を設けつつ、繁忙期にも対応可能
成果報酬型の特徴
- 成果(例:アポ取得、販売数)に応じた料金設定
- 営業系アウトバウンド業務に多い
- インセンティブ的な位置づけで委託先のモチベーション向上にもつながる
このような柔軟なプランは、短期的なプロジェクトや特定の目的を持った施策に有効です。ただし、報酬基準や成果定義について事前の合意が重要になります。
委託費用の相場感と目安
コールセンター委託を検討する際、多くの企業が最も気になるのが費用の相場感です。ただし、業務の内容や件数、運用体制によって相場は大きく変動します。ここではインバウンド・アウトバウンド別の相場や、業種別・件数別に見た価格傾向について整理し、見落とされがちな初期費用やシステム費用も解説します。
インバウンド・アウトバウンド別の相場
コールセンター業務は大きく分けてインバウンド(受信業務)とアウトバウンド(発信業務)に分類され、それぞれで費用感が異なります。
【インバウンド業務】
- 月額固定:20万〜80万円前後(席数・時間帯による)
- 従量課金:1件あたり200円〜400円程度
- 多くのケースで土日・夜間対応や専用窓口の設置で追加料金が発生します
【アウトバウンド業務】
- 成果報酬型:アポ1件あたり8,000円〜15,000円程度
- 時間単価型:1時間あたり2,000円〜4,000円程度
- 業務難易度や対象リストの性質によって変動が大きいです
アウトバウンドのほうが営業色が強く、専門性が高いため、費用が高くなる傾向があります。
業種別・件数別で変わる料金の傾向
委託費用は、業種や月間件数によっても変動します。以下は参考となる傾向です。
業種 |
平均的な費用帯(インバウンド) |
特記事項 |
EC・通販業界 |
30万〜60万円/月 |
繁忙期と閑散期の差が大きい |
ITサービス |
40万〜80万円/月 |
テクニカル対応で高単価 |
医療・介護 |
35万〜70万円/月 |
法令遵守や専門知識が必要 |
金融・保険 |
50万〜100万円/月 |
高度なトークスキルが必要 |
また、1日あたりの対応件数が100件以上になると、別料金プランや専属対応チームの編成が必要になる場合があります。
初期費用・システム連携費用にも注意
運用開始時には、月額費用とは別に以下のような初期費用が発生する場合があります。
- 初期設定費用:マニュアル作成、システム設計費など(10万〜30万円)
- システム利用料:CTI、CRM、チャットボットなどの連携費用(5万〜20万円)
- 研修・教育費:商品・サービスのレクチャーにかかるコスト(案件により変動)
これらは契約内容によっては無料になることもありますが、見積もり時に確認しておくべき重要項目です。

費用対効果を高めるためのポイント
コールセンター委託は単に費用を抑える手段ではなく、顧客対応の質を維持・向上させながら効率化を図る手段でもあります。費用対効果を最大限に引き出すためには、単価だけを見るのではなく、業務範囲の明確化や品質評価、運用体制の柔軟性も含めて検討することが大切です。
委託範囲と業務内容の明確化
委託の成功は、依頼する業務内容がどこまで明確に整理されているかに大きく左右されます。対応範囲が曖昧なまま進めると、追加料金が発生したり、期待したサービス品質が得られなかったりする可能性があります。
費用対効果を高めるために必要な整理項目:
- 問い合わせ対応の種類(注文、相談、クレームなど)
- 対応可能な時間帯や曜日
- 必要なシステムやツールの連携要件
- 業務のフロー図や対応マニュアルの有無
初期段階での情報提供が、スムーズな運用とコスト最適化の土台となります。
見積もり比較時に見るべき項目
複数の委託先から見積もりを取る場合、金額だけで判断するのは危険です。以下のような項目を比較ポイントとして整理することで、適切な判断が可能になります。
- 月額・従量単価・成果報酬など料金構造
- 初期費用の有無と内訳
- 対応できる業種・業務の実績
- 導入後の運用体制(報告頻度・品質管理)
- 対応品質の担保方法(モニタリング・フィードバック体制など)
価格に含まれるサービス内容を正確に把握することが、結果的にトータルコストを抑える鍵になります。
品質と料金のバランスをどう考えるか
安さを優先するあまり、対応品質が低下すれば、顧客満足度の低下やクレーム増加というリスクに繋がります。以下の観点で品質と料金のバランスを検討することが大切です。
- オペレーターの教育体制や言葉遣いのレベル
- 専属対応の有無や1次/2次対応の切り分け
- 応対記録の共有頻度と形式
- 対応ミスやトラブル時の補償ルール
理想は、自社の業務特性に適した柔軟性を持ち、かつ適正価格で安定運用できる委託先を選ぶことです。料金だけにとらわれず、トータルでのパフォーマンスを評価する視点を持ちましょう。
委託と内製の費用比較と向き不向き
コールセンター業務を自社内で構築・運営するか、外部に委託するかは、費用・人材・体制構築の観点から慎重に検討する必要があります。それぞれのコスト構造と、どんな企業にどちらが適しているのかを明らかにすることで、より戦略的な選択が可能になります。
自社運営のコスト試算(採用・教育・人件費)
内製化には、目に見えにくい固定費と管理コストが多く発生します。代表的なコスト項目は以下の通りです。
項目 |
概算コスト(月間) |
オペレーター人件費 |
20万円 × 人数(3名=60万円) |
教育・研修コスト |
月5万円〜10万円 |
システム費用 |
月5万〜15万円(CTI、CRMなど) |
管理者人件費 |
30万〜50万円(1人) |
その他設備費 |
電話・PC・ネット回線など初期導入費用 |
トータルで見ると、月額100万〜150万円以上のコストが発生するケースも珍しくありません。
また、採用活動の難易度や退職リスク、教育にかかる手間も含めると、運用の安定化には相応の労力と時間が必要です。
委託の柔軟性と長期的コストメリット
一方で、外注化により変動費として管理可能になる項目も多く、初期導入の障壁が低くなるメリットがあります。
- 人材採用・教育の手間を削減
- 管理者のリソースを本来業務に集中できる
- 件数やシーズンに応じた調整が可能
たとえば、繁忙期だけ増員したい、夜間だけ対応したいといった柔軟なニーズにも応じやすく、人件費やシステム維持費の負担を平準化できます。
委託費用は月額30万〜80万円前後が目安ですが、内製で発生する固定コストや管理負担を考えると、コストパフォーマンスに優れるケースも多く見られます。
委託が向いている/向いていない企業の特徴
委託が「最適解」となる企業と、「内製の方が合っている」企業には、それぞれ特徴があります。
委託が向いている企業
- 電話件数が一定以上ある
- コールセンター運用の知見や人材が不足している
- コア業務に集中したい
- 繁閑差が大きく、柔軟な人員調整が必要
内製が向いている企業
- 対応品質を自社で細かくコントロールしたい
- 高度な商品知識や社内情報が必要な問い合わせが多い
- オペレーターとの一体感を重視している
- 長期的な視点で自社の資産として運用したい
こうした要素を踏まえたうえで、自社の体制・予算・対応ニーズに最適な選択肢を選びましょう。
まとめ
コールセンター業務の委託においては、料金体系や費用相場を正しく理解することがコスト最適化の第一歩となります。月額固定・従量課金・成果報酬などの契約形態によって費用構造は異なり、自社の業務内容や対応件数に応じた選択が求められます。また、委託と内製ではコストの内訳や負担の性質が異なるため、目的に合わせた柔軟な判断が必要です。
見積もり比較時には、単価だけでなく対応品質や運用体制、追加費用の有無も含めて検討しましょう。費用対効果を高めるには、委託範囲の明確化と定期的な評価がカギとなります。最適なパートナーと共に、業務効率の改善を実現していきましょう。
